彗星のごとく現れ、またたく間にJ-POPシーンのトップランナーとなったVaundyさん。彼の生み出す楽曲は、キャッチーなメロディだけでなく、どこか洗練された「構図」のようなものを感じさせます。その秘密は、彼が日本大学芸術学部(日芸)のデザイン学科で学んだという背景にあります。
音楽家でありながら、現役の美術学生(卒業生)としての視点を持つ彼は、独自の「視覚的音楽論」を楽曲制作に取り入れています。音を単なる聴覚情報としてだけでなく、形や色、配置といったデザイン的な要素として捉える手法は、これまでのJ-POPにはなかった斬新なものです。
この記事では、Vaundyさんの楽曲制作における美大出身ならではの視点について深掘りします。なぜ彼の音楽はこれほどまでに私たちの心を掴み、映像的な広がりを感じさせるのか。その裏側に隠された論理的な音作りと、アートディレクションの重要性についてやさしく解説していきましょう。
Vaundyの楽曲制作の根底にある美大出身ならではの視覚的音楽論

Vaundyさんの音楽を語る上で欠かせないのが、彼が持つ「デザイン的な思考」です。彼は楽曲をゼロから作り上げる際、一般的な作曲家とは少し異なるアプローチを取ることが多いといわれています。まずは、その独自の視覚的音楽論がどのようなものか見ていきましょう。
音を「キャンバスに描くオブジェクト」として捉える感覚
Vaundyさんは、自身の楽曲制作において「音を配置する」という感覚を非常に大切にしています。これは、美大でデザインを学ぶ過程で養われる「レイアウト」の概念に近いものです。キャンバスという限られた空間の中に、どの要素をどこに置けば視線が誘導されるかを考えるように、彼は楽曲の構成を組み立てています。
例えば、ボーカルの立ち位置を中心(センター)に据え、その周りにどのような色の楽器を配置するかという視覚的なイメージを常に持っています。「音の高さ」を縦軸、「音の広がり」を横軸、そして「音の質感」を奥行きとして捉えることで、立体的で立体的な音響デザインを実現しているのです。
この感覚があるからこそ、彼の楽曲はイヤホンで聴いたときに、まるで目の前で空間が広がっているような錯覚を覚えます。ただ音を重ねるのではなく、不要な隙間(余白)を活かしたり、あえて特定の場所に強いインパクトを置いたりと、グラフィックデザインの手法をそのまま音楽に翻訳していると言えるでしょう。
デザインの基本原則「色・形・質感」の音楽への応用
デザインの基礎教育では、色、形、質感をどのように組み合わせるかを徹底的に学びます。Vaundyさんは、この三要素を音楽の要素(音色、旋律、リズム)と完全に同期させて考えています。例えば、ある曲のギターの音色を「ザラザラした灰色のテクスチャ」と感じたり、ベースラインを「太く丸い黒のライン」として認識したりしています。
こうした視覚的なイメージが明確であるため、編曲(アレンジ)の段階で迷いがありません。自分の頭の中にある「絵」を完成させるために、必要な音をパズルのように組み合わせていくのです。このアプローチは、感性だけに頼る制作とは一線を画し、非常に論理的で再現性の高いものとなっています。
私たちが彼の楽曲を聴いて「お洒落だな」「かっこいいな」と感じる理由は、こうしたデザインの黄金比のようなものが、音の組み合わせの中にも潜んでいるからかもしれません。まさに、音楽を「聴くもの」であると同時に「見るもの」として構成しているのが彼の強みです。
デザインと音楽の要素の対応例
・配色(カラーパレット)= コード進行や音の響き
・レイアウト(配置)= 楽器構成やパートごとの音量バランス
・テクスチャ(質感)= 音の歪みやエフェクトの感触
・フォント(書体)= ボーカルの声質や歌い方のニュアンス
聴覚情報を即座に視覚イメージへ変換する「シンクロニシティ」
Vaundyさんの才能の一つに、音が鳴った瞬間にそれがどのような映像になるかを予見する力があります。これは、音楽と映像を切り離して考えるのではなく、最初から一つの「作品(アート)」としてパッケージ化していることを意味します。彼にとって楽曲制作とは、映画のワンシーンやポスターのデザインを構築する作業に近いのかもしれません。
この能力は、彼の楽曲がSNSや広告、ドラマなどのタイアップで驚異的な相性の良さを見せる要因にもなっています。映像に合わせた音を作るのではなく、音がすでに映像的な説得力を持っているため、クリエイターが彼の曲を起用したくなるのです。聴き手の脳内にも、音とともに鮮やかな風景が浮かび上がるような仕掛けが施されています。
さらに、彼は自分自身の声を「ひとつの素材」として客観的に扱っています。曲によって歌い方や声のトーンを劇的に変えるのは、その楽曲というデザインにおいて最適な「フォント」を選んでいるような感覚なのでしょう。徹底した客観視と、美大で培われた造形感覚が、彼の音楽を唯一無二のものにしています。
デザイン思考を音楽に昇華させるクリエイティブプロセス

Vaundyさんの楽曲制作は、単なるインスピレーションの産物ではありません。美大で学ぶ「デザイン思考(Design Thinking)」、つまり問題を解決したり、特定の目的を達成したりするためのプロセスが組み込まれています。ここでは、その具体的な制作過程に迫ります。
「何を伝えるか」よりも「どう見せるか」を重視する設計図
一般的なシンガーソングライターは、「自分の感情」を吐露することから曲作りを始めることが多いですが、Vaundyさんの場合は少し異なります。彼はまず「この曲はどのような役割を果たすべきか」というゴールを定めます。これは、クライアントの要望に応えるデザイナーの仕事の進め方に非常に似ています。
流行している音楽の傾向を分析し、現代のリスナーが求めている「心地よさ」や「違和感」を抽出します。その上で、どのジャンルの要素を抽出すればターゲットに響くのかを計算して設計図を書くのです。感情を込めるのは最後の工程であり、その前段階では徹底して構造的な美しさを追求しています。
このような客観的な視点があるからこそ、彼は特定のジャンルに縛られることなく、シティポップ、ロック、R&Bといった多種多様な音楽を自在に操ることができるのです。彼にとってジャンルとは、表現したい目的を達成するための「画材」の違いに過ぎないのかもしれません。
DAW(音楽制作ソフト)をグラフィックソフトのように使いこなす
Vaundyさんは、楽曲制作のほぼすべての工程を自分一人で行うマルチクリエイターです。彼が使用するDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)の画面は、おそらくIllustratorやPhotoshopといったデザインソフトのレイヤー構造と同じ感覚で扱われています。
音の波形を視覚的に捉え、どの帯域が重なっているか、どこに空白があるかを画面上で確認しながら調整していきます。耳で聴いて判断するのはもちろんですが、画面上の「バランス」を見て、美しくない部分は修正するという作業を繰り返します。音の「密度」をデザイン的にコントロールすることで、聴き疲れしないけれど情報量が多い、中毒性のあるサウンドが生まれます。
また、彼はレコーディングされた音をそのまま使うのではなく、加工を施すことで「テクスチャ(質感)」を作り出すことに長けています。あえて音を汚したり、エコーでぼかしたりする作業は、写真にフィルターをかけて雰囲気を演出する作業と完全に重なります。こうしたデジタルツールへの適応力も、美大出身者ならではの武器と言えるでしょう。
ユーザーエクスペリエンス(UX)を意識したリスナー体験の構築
デザインの重要な役割の一つに、使う人の体験(ユーザーエクスペリエンス)をより良くすることがあります。Vaundyさんは、この考えを音楽にも持ち込んでいます。リスナーがその曲をどのタイミングで聴き、どのような気持ちになり、いつサビが来れば一番気持ちいいと感じるかを緻密に計算しています。
例えば、イントロの数秒でリスナーを捕まえるためのフック(引っかかり)の作り方や、SNSでシェアしたくなるような短いフレーズの配置など、現代のデジタル環境に最適化された体験を提供しています。これはまさに、Webサイトの使いやすさを設計するUXデザインそのものです。
彼は「自分が歌いたい歌」を押し付けるのではなく、「リスナーが体験したい世界観」を提供することに専念しています。聴き手のニーズを先読みし、最高の満足感を与えるための仕掛けを音の中に散りばめる。このサービス精神こそが、彼の楽曲が幅広い世代に支持される大きな理由となっています。
視覚と聴覚が同期するミュージックビデオの制作手法

Vaundyさんの真骨頂は、音だけでなく映像までを含めたトータルプロデュースにあります。彼自身が監督やアートディレクションを務めることも多く、そこには美大で培われた映像論が色濃く反映されています。
監督・演出まで手掛けることで生まれる圧倒的な統一感
多くのアーティストは、楽曲が完成した後に映像制作チームにMV(ミュージックビデオ)を依頼します。しかしVaundyさんの場合、作曲の段階ですでに脳内に映像が流れており、時には映像の構想が先にあることさえあります。自らメガホンを取ることで、「この音のときにはこの色、この動き」という完全な同期を実現させています。
彼のMVを見ると、楽曲のテンポとカット割りのタイミングが驚くほど精密に合っていることに気づきます。スネアドラムが鳴る瞬間に画面が切り替わったり、ベースの低音に合わせて被写体の動きに重厚感を持たせたりといった演出が、聴覚と視覚の快感を倍増させているのです。
また、映像内の色彩設計(カラーグレーディング)も非常に緻密です。楽曲が持つ温度感に合わせて、暖色系でまとめるのか、あるいは冷たく無機質なブルーで統一するのかといった判断が的確です。音を聴くだけで色が浮かび、映像を見るだけで音が鳴り響くような一体感は、彼にしか作れない世界観です。
Vaundyさんは、MV制作において「ライティング」と「構図」に強いこだわりを持っています。どの角度から光を当てれば楽曲の持つミステリアスな雰囲気が引き立つか、どの位置に人物を置けば画面に緊張感が生まれるかを熟知しています。
色彩感覚がサウンドの明暗や温度に与える影響
Vaundyさんの楽曲には、聴くたびに特定の「色」を感じさせる力があります。これは、彼が色彩心理学や色相環の知識を音楽に応用しているからだと推測されます。例えば、ポップな曲調では補色関係にある音色を組み合わせてコントラストを強め、しっとりとしたバラードでは類似色のような調和の取れた音作りをしています。
サウンドの「明るさ」は、単なるボリュームや高域の多さではなく、色彩としての明るさとして捉えられています。くすんだ音色を重ねてヴィンテージ感を出し、鮮やかなシンセサイザーの音を一点突破で加える手法は、まさに絵画における「ハイライト」の入れ方そのものです。
リスナーが「なんとなくこの曲は夕暮れっぽい」「これは夜の都会の色だ」と感じるのは、彼が意図的にそのような色彩情報を音の中に埋め込んでいるからです。彼のパレットには、無限の音色が並んでおり、それをデザインのルールに従って丁寧に並べているのです。
ストーリーボードとしてのメロディラインと歌詞の配置
歌詞の書き方においても、Vaundyさんの視覚的センスは発揮されています。彼は言葉を「意味」としてだけでなく、その響きや文字の並びが作る「形」として捉えることがあります。歌詞カードを見たときの文字の密度や、発音したときの口の動きまで計算されているのです。
楽曲の展開は、一本の映画のストーリーボード(絵コンテ)のように構成されています。静かな導入部から、徐々に盛り上がりを見せるBメロ、そして視界がパッと開けるようなサビ。この起承転結の付け方が非常に映像的で、聴いているだけでドラマを一本見終えたような満足感があります。
特に、歌詞の中に具体的な色彩表現や光の描写を入れ込むことで、聴き手のイメージをより鮮明にガイドします。抽象的な感情を歌う際にも、それを何らかの「現象」として描写することで、誰の頭の中にも同じ映像が共有されるように設計されています。こうした「イメージの共有」を意図した作詞術も、デザイン的なコミュニケーション能力の賜物と言えるでしょう。
ジャンルレスな音楽性に宿る「レイアウト」の意識

Vaundyさんの楽曲を語る際によく使われる言葉が「ジャンルレス」です。ロック、ヒップホップ、シンセポップなどが複雑に混ざり合っているのに、バラバラな印象を与えません。そこには、異なる要素を美しく整理する「レイアウト」のセンスが光っています。
多様なジャンルを「素材」として配置するコラージュセンス
デザインの技法に「コラージュ」というものがあります。異なる写真やイラストを切り貼りして、新しい一つの作品を作る手法です。Vaundyさんの音楽制作は、まさにこのコラージュに近いものがあります。彼は、古今東西の音楽のエッセンスを「素材」として捉えています。
例えば、80年代のドラムサウンド、90年代のギターフレーズ、そして現代的なボーカル処理。これらをバラバラに組み合わせても、通常は違和感が生じます。しかし、彼はそれらを「全体のバランス」を見て配置するため、不思議な統一感が生まれます。「ここにはこの重みが必要だから、このジャンルのベースを置こう」という論理的な配置が行われているのです。
これは、美大で多様な美術様式を学び、それらを自分のスタイルに落とし込む訓練をしてきたからこそできる技です。過去の遺産をただ模倣するのではなく、現代のキャンバス(楽曲)を美しく彩るための「パーツ」として再定義している点が、彼の独自性と言えます。
トレンドを分析し再構築する「リサーチとアウトプット」
デザイナーにとって、市場のトレンドをリサーチすることは不可欠な作業です。Vaundyさんも、現在の音楽シーンで何が流行っているのか、何が「かっこいい」とされているのかを冷静に分析しています。しかし、それをそのまま出力するのではなく、自分のフィルターを通して再構築(リビルド)します。
彼は「ヒット曲を作るのは、パズルを解くようなものだ」というニュアンスの発言をすることがあります。どのタイミングでどんな音が鳴れば人の耳に残りやすいのかを、過去のヒット曲の構造から読み解いているのです。これは、優れたデザインを分析して、その美しさの法則を盗むデザイナーの修行そのものです。
こうした研究熱心さと分析力が、彼の楽曲に「キャッチーさ」と「芸術性」の両立をもたらしています。単に感性で勝負するのではなく、しっかりとしたマーケティング視点に基づいた「機能美」のある音楽。それこそが、Vaundyというブランドが強力である理由の一つです。
| 要素 | 従来のアプローチ | Vaundyのアプローチ |
|---|---|---|
| 作曲の起点 | 自身の感情や経験 | 目的やコンセプトの設計 |
| ジャンル | 一つのジャンルを深掘り | 複数のジャンルをレイアウト |
| 制作範囲 | 分業制(作詞・作曲のみ) | 完全セルフプロデュース |
| 音の捉え方 | 旋律や和音の響き | 形、色、質感を伴う立体像 |
視聴者の視線をコントロールする音の「焦点」作り
優れたポスターデザインには、必ず「最初に目がいく場所(フォーカルポイント)」があります。Vaundyさんは音楽においても、この焦点をどこに置くかを厳密に決めています。曲の始まりから終わりまで、リスナーの意識をどこに向かせるかを演出しているのです。
ある箇所ではボーカルの息遣いに注目させ、別の箇所では背後で鳴っている小さなノイズに耳を向けさせる。音の強弱や定位(左右のパン)を駆使して、リスナーの「耳の焦点」を動かしていきます。この誘導がスムーズであるため、私たちは彼の曲を最後まで飽きずに、かつ没入して聴き続けることができます。
この「視線(意識)誘導」のテクニックは、情報の優先順位を決めるデザインの基本ルールそのものです。何が主役で、何が脇役なのか。その境界線をあえて曖昧にしたり、強調したりすることで、音楽という時間芸術の中に物語性を生み出しています。
現代のクリエイター像を象徴するマルチポテンシャル

Vaundyさんの活動形態は、これからの時代のアーティストのあり方を提示しています。音楽だけ、映像だけ、デザインだけという枠組みを超え、すべてを統合して「一つの世界観」を作り上げる能力について解説します。
音楽業界におけるアートディレクターとしての立ち位置
彼は自分自身を「アーティスト」であると同時に「アートディレクター」であると考えている節があります。アートディレクターとは、プロジェクト全体のビジュアルや方向性を決定し、統括する役割のことです。Vaundyさんの場合、そのプロジェクトが「自分自身の活動すべて」に該当します。
ジャケットデザイン、グッズの制作、ライブの舞台演出。これらすべてに彼の意志が介在しており、一つ一つのアウトプットに一貫性があります。美大という場所で「自分の作品をどうプレゼンテーションするか」を学んだ経験が、セルフブランディングにおいて圧倒的な強みとなっています。
音楽が単体で消費される時代ではなく、映像やアイコン、SNSでの見え方を含めた「トータルパッケージ」で評価される現代において、彼の多才さはまさに最強の武器です。自らの楽曲を、どのようなパッケージで包めば一番輝くのかを誰よりも理解しているディレクターなのです。
デジタルネイティブと美大教育の相乗効果
Vaundyさんは、幼少期からインターネットやデジタルツールに親しんできたデジタルネイティブ世代です。そこに、美大でのアナログ・デジタルの両面からの教育が加わったことが、彼の表現の幅を広げました。手仕事のような温かみと、デジタルならではの緻密さを自在に行き来できるのが特徴です。
例えば、彼の楽曲にはあえてアナログレコードのようなノイズを入れたり、生楽器の生々しさを強調したりする工夫が見られます。一方で、それを完璧なタイミングでエディットするデジタルな感性も持ち合わせています。この「不完全な美しさ」をデジタルで制御するバランス感覚は、現代の美術教育が生んだ一つの到達点と言えるかもしれません。
また、彼は情報を検索し、習得するスピードが非常に早いです。新しい技術やソフトウェアが登場すれば、それをすぐに自分の武器として取り入れ、表現に昇華させます。このアップデートの速さは、変化の激しい現代のクリエイティブ業界において、生き残るための必須条件でもあります。
Vaundyさんは、自身の制作環境についてもSNSなどで公開することがあります。そこから垣間見えるのは、徹底的に効率化された合理的なシステムです。美大での学びを通じて「作品を完成させるためのプロセス」を自分なりに最適化していることが伺えます。
広告デザイン的なヒットの法則と大衆へのアプローチ
彼の作る楽曲は、時として非常に「広告的」です。これは悪い意味ではなく、短い時間で強烈な印象を残し、人々の記憶に刻み込む能力が高いという意味です。美大のデザイン教育では、ポスターやCMがいかにして人の心を動かすかという広告心理学的な側面も学びます。
どのようなメロディが「親しみやすさ」を感じさせ、どのような言葉が「違和感」として記憶に引っかかるか。彼はそうしたヒットの法則を、デザインの視点から解析し、楽曲に落とし込んでいます。そのため、一度聴いただけで口ずさめるようなフレーズや、何度もリピートしたくなる中毒性が生まれるのです。
彼は「自分のためだけ」に音楽を作っているのではなく、常に「それを受け取る他者」を意識しています。大衆にどう届き、どう消費されるかまでをデザインする。その姿勢は、アーティストというよりも、社会と作品の接点を作るプロのデザイナーの姿そのものです。この客観性とプロ意識が、彼をスターダムへと押し上げた要因でしょう。
Vaundyの視覚的音楽論が示すJ-POPの新たな可能性
ここまで、Vaundyさんの楽曲制作における美大出身ならではの視覚的音楽論について詳しく見てきました。彼の登場は、日本の音楽シーンにおけるクリエイターの定義を大きく書き換えたと言っても過言ではありません。
彼は音楽を、旋律の積み重ねとしてだけでなく、形、色、質感を伴う一つの「空間デザイン」として構築しています。美大で学んだレイアウト、色彩感覚、デザイン思考、そしてUX(ユーザー体験)の考え方が、彼の楽曲の一つ一つに論理的な美しさを与えています。また、自ら映像制作やアートディレクションを手掛けることで、視覚と聴覚が完璧に同期した体験を私たちに届けてくれます。
感性や才能といった言葉だけで片付けられがちな音楽制作において、これほどまでに論理的で視覚的なアプローチを持ち込んだことは、非常に革新的です。Vaundyさんが示す「デザインとしての音楽」は、これからの時代のアーティストにとって、一つの指針となっていくことでしょう。
彼の楽曲を聴くときは、ぜひ耳だけでなく「目」でもその世界観を感じてみてください。音の中に配置された色や、空間を彩る光の描写が見えてきたとき、彼の音楽はさらに深い輝きを持って私たちに語りかけてくるはずです。



